書き出しから言い訳するが、この文章は失敗だ。何が駄目かって、松永玲子を誉めすぎた。これじゃ、気持ち悪いじゃないか。しかし、公演本番中に原稿を引き受けてしまったから書き直す時間が無い。私はこんなことしてるより、皆で楽しく酒を飲んでいたいのだ。
そこで、非常に甘ったるい賛美の言葉をそのまま彼女に送ることにする。
結局のところ、長所を見つけやすい人だし、書きやすいほどにそこに気づかされてしまう人、いや、女優なのである。
いかん、また誉めている。
どうでもいいや、お読みください。
我が”星屑の会”の作・演出の水谷龍二さんがよく言うのだが、喜劇女優というのは難しい。喜劇もできる女優はいるかもしれないが、喜劇女優はそう多くはない。松永玲子は、そんな数少ない女優にきっとなりそうな気がする。
彼女の良いところは色々あるが、まずは顔立ちである。ちょっといい女に見えてしまうし、笑える顔にも見える。無理矢理広く言えば、お姫様から乞食まで、女郎から歯医者まで、野武士から吉野家の店員まで出来そうな顔である。こういう顔は得である。
それから、度胸と根性が座っているのが良い。今回の「薔薇と大砲」の彼女のラストシーン。神父役のみのすけ君に「キモチイイ、チンポ」とケツから迫っていくのには稽古場でちょっと驚いた。下ネタをあんな風に軽々とはそうそうできるものではない。
今回のサーカス芸人ダサモ役と神父の薄幸の元奥さん役の二役使い分けもなかなかである。もちろん芝居の感は言うまでもなく、加えてギャグのセンスも良い。
ケラの芝居でアドリブを言う役者はあまり稽古場で見かけなかったのだが、ダサモ役の彼女は隙あらばなんかやってくる。最初はバラエティのりの奴なんだなと、正直言うと馬鹿に生真面目な私にはそれが鼻についた。でも、よくよく稽古の進行具合を見ていたら実に利にかなっているアドリブの飛ばし方であり、はめ方も上品で的確である。結局分かったことは、この人は若さに似合わず、演出家との付き合い方を分かっている女優だなということである。しかも稽古のごく早い段階でそれを意識し、理解し、弾を撃ってくる。アイディアウーマンである。
それと、こんなことに感心するのは私ぐらいかもしれないが、小劇場関係のご多分に漏れずナイロン100℃でも小道具から衣装や他のものまで、役者たちが率先してお手伝いしている。松永玲子は、チケットの売れ行きやパンフレット、ホームページなどの手配、いわゆる制作関係の仕事をやっている。実はである。普通、この制作関係の仕事を任されてしまう役者は肝心の舞台でなかなか光を放たないのである。私はそういう例をかなり見てきた。ところが、彼女はその気を使う仕事を稽古場でこなしながら見事にアドリブも考えているのである。たいていのほかの仕事は単純労働者になれるが、制作はそうはいかない。頭も使って、仕事も責任もきつい。普通はここでへこたれるんだが、彼女は利口なんだろう。使える頭を両方にうまく振り分けているのである。
誉めすぎついでに言っておくが、落語がうまいのが腹が立つ。「超老伝」で初めて見たのだが、地の喋りをあんな風には女性は喋れないものである。明大落研出身の私は、こいつも落研だったなと思ったら案の定であった。小憎たらしい上方落語野郎である。
ここまで誉めてしまうと、後は早く壁にぶち当たってほしいと思うくらいである。
ところが、今回の芝居『薔薇と大砲~フリドニア日記#2~』を見に来た私の知り合いのTVプロデューサーが、彼女は何者なのかをしきりに知りたがっていたから、壁の前にはしごを上ってしまうかもしれない。
このホームページを見て、松永玲子を応援している皆さん。応援し甲斐のある女優だと思いますよ。声援を送ってあげてください。
と、やたらと誉めてしまったので来月辺りに、みのすけ君が裏事情や、本当の松永玲子を暴露すると言ってました。乞うご期待!
ちなみに上の写真は、自衛官の馬鹿な上官の役になろうとしているメークの時間。
星屑の会も見に来て下さい。